文=江原規由?國際貿易投資研究所チーフエコノミスト
今年ほど、倹約、質素、簡素が勵行された『両會』(全國人民代表大會と政治協商會議のこと。日本の衆參両議院に相當。毎年3月開催されるが、今年はその第12期第2回會議)はなかったでしょう。そんな『両會』の雰囲気を代弁していたのがペットボトルでした。例えば、各地の『両會』代表委員(日本の衆參両院議員に相當)が宿泊するホテルでの會議では、代表委員の名前が貼られたペットボトルが配られ、午前の會議で飲み殘こされたミネラルウォーターは、そのまま午後の會議に持ち越されました。宿泊先での食事は家庭料理中心でセルフサービス、代表委員との宴席や出迎え時の花束贈呈や土産品など贈物は一切禁止。『両會』関係職員數も削減、関連資料は簡素化、報道陣への電子版形式での資料提供など、無駄を抑えた実務的『両會』運営が徹底されていたといわれます。『両會』は今年で60周年を迎えましたが、長く続いた習慣や大會(會議)スタイルを変えるのはそう簡単ではなかったはずです。
昨年11月に開催された中國共産黨第18期全國代表大會第3回會議(黨18期三中全會)は、経済、政治、社會、文化、環境など分野での『改革深化』がメインテーマでした。2014年は『改革深化元年』とされていることからもわかるように、今年の『両會』は、その『改革深化』の継続という重責を擔っていました。3月4日の記者発表で、第12期全國人民代表大會第2回會議副秘書長の傳瑩氏は、“清く正しい大會としたい。大會に対する人民の監督を歓迎する”としました。黨18期三中全會で決定された『改革深化』の精神は、今年の『両會』の會議スタイルにも徹底されていたわけです。
人民が期待する改革深化
3月5日、李克強総理は第12期全國人民代表大會第2回會議で、國務院を代表して『政府工作(活動)報告』(以下、『報告』)を行いました。その中で、2014年の政府工作は、『改革深化』を原動力として、構造調整(経済昇級版)を改革深化の主方向、民生向上をその主目的とすると宣言しました。
『両會』直前、人民網がインターネットユーザー(回答:326萬人)を対象に実施した興味深い調査(『両會』で審議を期待するテーマ)があります。上位10テーマは、①社會保障(養老、身障者保護など),②反腐敗(高官汚職、関連法整備、世論監視など),③食品?薬品安全(品質検査、抗生物資、関連法律の不備など),④収入分配(収入水準、賃金格差、賃金決定メカニズムなど),⑤幹部作風(職権亂用、官僚主義、民衆による監視など),⑥計畫出産(社會扶養費の徴収?金額、養育費、関連政策など),⑦環境保護(産業構造、環境意識など),⑧教育改革(教育資源の不公平、教育水準など),⑨住宅(住宅価格など),⑩新都市化)でしたが、いずれも『報告』に織り込まれており、また、『改革深化』の目的である『民生向上』と関係している點で、『報告』は民意を十分反映していたといえます。