「日米安全保障條約」は、日米軍事同盟関係の基礎となる條約文書である。だが日米軍事協力の具體的な方向を指し示しているのは、その後に締結された「日米防衛協力のための指針」(通稱ガイドライン)である。このガイドラインは1978年に締結され、1997年に改定された。2015年4月に打ち出された新ガイドラインは再改定を受けた第3版である。(文:王広濤?日本名古屋大學博士研究生)
新ガイドラインは、日米の地球規模の同盟関係と安全保障問題での「シームレス」な協力を構築するものである。だがこの目標を達成するためには、日本は、多くの安全保障関連の法律を修正し、さらに新たな法案を加え、日米同盟の必要を満たさなければならない。今年5月以來の日本國會の爭點は、この安保法制を具體的に検討するものである。國會で多數を占める自民黨政権は、國會會期を95日延長し、安保法制を今國會で何としても通そうとしている。
日米新ガイドラインの締結は、中國とも密切な関係を持っている。新ガイドラインは、中國に対応するために改定されたものと言ってもいい。18ページに達する內容の中に「中國」の2文字はないが、その行間からは中國を抑えこもうとする意図が読み取れる。例えば新ガイドラインは海洋安全保障について過度に強調している。海洋國家である日米両國が海洋安全で幅広い共通の利益を持っていることは確かだが、今回の改定では、海洋航行の自由の問題が強調されており、中國の南中國海問題に対する日米などの國の批判を連想させるものとなっている。
日米両國は、南中國海問題における両國の共通の利益を強調しているが、細かく見ていくと、両者にやはり違いがあることがわかる。
米國が世界の大國としての地位を守るために南中國海問題の中國の行動に介入しているとすれば、中米両國の南中國海における爭いは米國にとっては影響力の問題である。それに対して日本が計算しているのはより実際的な利益の得失である。日本はこれまでも、ペルシャ灣から印度洋、マラッカ海峽を経て日本にいたる航路が海上の「生命線」であると強調してきた。南中國海は日本にとってはこの海上の生命線で必ず通らなければならない場所である。日本はもともと中國への猜疑と警戒を持ち、中國の南中國海問題での一挙一動に神経を尖らせている。このほど行われたG7サミットの首脳宣言は、名指しはしなかったものの中國を非難するものとなっているが、日本政府の働きかけの結果とみなされている。